即改善業務フロー:経理部への直接請求
赤字経営になる要因は、費用面から突き付めると、内部要因と外部要因の2つに集約されます。内部要因は過剰業務を行っておりそれに伴い過剰人員となっていること、外部要因は過剰コストをかけていることなど、があります。ところで、内部要因で「過剰業務」と書きましたが、赤字企業において共通しているのは、「過剰業務であると気づけない状態」に陥っているということです。
「過剰業務であると気づけない状態」ことがわかる、典型的な業務フローというものがあります。それは、外部から請求書を受け取る際に直接会社の経理部へ費用の請求をしているというフローです。もし社長さんの会社が、こういった業務フローを行っている場合には、たとえ今が黒字でも即刻改めてください。将来的に過剰業務であることが気付きづらくなり、赤字転落する可能性が増えるからです。本記事で詳しく説明しますが、経理部へ直接請求をするフローの場合「過剰業務であると気づけない」のです。
今回は、経費を使った会社から請求書を受領する業務フローの事例をもとに、即改善すべき業務フローとどのように改善するのか理想の業務フローを示したいと思います。こいtらの、「即改善業務フローに当てはまる」場合には、ぜひ明日からでも以下の説明通りに改善を進めてください。
<目次>
1.即刻改善業務フロー:請求処理フローの事例 |
1.1.請求書を直接経理部へ送付 |
1.2.費用負担部門を分類しないで支払処理を行う |
2.経理部への直接請求がダメな理由 |
2.1.費用負担部署が不明確になる |
2.2.実際の費用負担部署の責任意識が薄くなる |
3.理想的な請求処理のフロー |
3.1.請求書は使用部門に請求してもらう形へ変更する |
3.2.使用部門から経理に支払依頼処理をする |
1.即刻改善業務フロー:請求処理フローの事例
1.1.請求書を直接経理部へ送付
複数事業部などが事業部ごとに仕事を進める場合、各事業部単位で、販促のために展示会に出展したり、リスティング広告などを使ったりすることが日常的に行われます。これらは”広告宣伝費”に分類されるものですが、この”広告宣伝費”を使った際に、請求の流れがどのようになるのか業務フローをもとに考えてみたいと思います。
赤字企業に共通するのが、費用を使った先の企業から直接経理部へ請求書を届くような業務フローにしているという点です。これは結論から言うと「やってはいけない・ダメな請求処理のフロー」の典型となります。以下の図をご覧ください
<ダメな請求処理フロー>
事前に費用を使う部署は取引先企業に対して、費用の請求を経理部へ行うように指示をしておくとこのようなフローになります。取引先はSTEP1で請求書を作成して経理部門へ送付します。STEP2で経理部門は、請求書の内容を確認し取引先企業へ支払処理を実施するというものです。
1.2.費用負担部門を分類しないで処理
この時のSTEP2の、経理部門の支払依頼処理のプロセスに注目してみましょう。
このような請求処理フローをとっている場合、往々にして経理部門が広告宣伝費の利用事業部を分類しないで、支払処理をすることがセットで行われます。実際に私が立て直しをした企業でもまたさしくこの現象が発生していました。毎月の会社に届く取引先企業からの請求書の枚数が100枚~200枚程度の企業だったのですが、経理部門では利用事業部門の分類をしておらず、経理部で費用に関してどの事業部の責任の下、費用を支払ったのかを全く把握しておらずただただ処理をするだけという状態でした。
こういった請求書を直接経理部門へ送付する請求処理フローが、何故ダメなのかをこれから説明したいと思います。
2.経理部への直接請求がダメな理由
2.1.費用負担部署が不明確になる
この請求処理フローがダメな理由の1つ目が、全社観点で費用負担部署が不明確になってしまうことです。
経理部門で処理する請求書の数が数枚~数十枚ならまだ経理部(※この規模なら経理部ではなく社長さんが直接処理する可能性が高いですが)判別可能なレベルですが、売上規模が増えるにつれて100枚~数百枚以上の請求書が届くことも普通になってきます。そうすると経理部でもその請求書が、どの事業部、もっというとどのプロダクト単位で使った費用なのか完全に把握が難しくなります。
こうなると、赤字企業から黒字企業への転換の際に必要な、事業部別P/Lの作成が困難になります。より正確に言うと、事業部別P/L自体は作れるといえば作れるのですが、中身の精度が甘い、すなわち不完全な事業部別P/Lしか作れないのです。
不正確な事業部別P/Lを見ても、その事業が本当に儲かっているのか・儲かっていないのか判断をすることが判断できなくなります。これは例えば健康診断などに例えると、検査を何回しても機械の精度が低ければ不正確な値しかでてこないのと一緒です。これを避けるためにも、費用負担部署が不明確になる経理部への直接請求はやめなければいけないのです。
2.2.実際の費用負担部署の責任意識が薄くなる
ダメな理由の2つ目が、事業部観点で費用負担意識が希薄になり、経費に対して甘い考えになってしまうという点です。
事業部側でも、毎月経理部で請求処理が行われてしまうと、どうしても費用に対する意識が薄れていきます。そうなると、無駄な費用を見直したりなどの事業部側の意識がどうしても薄くなるのです。赤字企業から黒字企業へと転換の際に、社長が決断することはもちろんですが、そもそもそうなる前に事業部で無駄な費用を垂れ流しにしないことが一番大切です。
事業部が経費に対して甘い考えのままでは、赤字から黒字への脱却するうえで足を引っ張る形となります。これを避ける意味でも、事業部にも費用に対してより厳しく意識を持ってもらう必要があるのです。そのため、やはり費用負担部署の責任意識が薄くなる、経理部への直接請求はやめなければいけないのです。
3.理想的な請求処理のフロー
3.1.請求書は使用部門に請求してもらう形へ変更する
では、理想的な請求処理のフローとはどのようなものになるでしょうか?答えは簡単で、費用を使った事業部(使用部門)から、経理部に対して支払い依頼処理が毎回入る請求処理となります。まずは、図で見てみましょう。
<理想の請求処理フロー>
具体的には前提として、スタート地点として取引先から請求書が届く際に経費を使用した事業部に対して請求書を発行するように取引先に通知しておきます。そのうえで、費用を使った事業部(使用部門)から、経理部に対して毎回支払い依頼処理を入れるように変更します(STEP1)。経理部では事業部から支払処理が入らない限り、取引先への支払処理は絶対に行われないように、社内の請求処理フローを変えるのです。
もちろん費用を使うのは事業部ばかりに限りません。全社契約と言えるような費用はどうすればよいかというと、こちらも管掌するバックオフィス系組織で対応します。例えば、会社が契約しているオフィスビルからの請求書の場合はオフィスビルを統括している部門(通常なら総務部)に請求書を送付してもらったり、会社が契約している従業員向けの生命保険契約の請求書の場合は人事部に請求書を送付してもらうなどします。この場合も総務部なり人事部が経理部へ支払処理依頼をする形にして、経理部は支払処理依頼部門が無い限り請求書の処理を行わないようにするのです。
このように、外部から届く請求書に対しては全て費用負担部署を明確にしたうえで、費用負担部署から経理部門へ請求書の支払処理依頼をするように請求処理フローを変更します。
3.2.自動的に費用負担部門が明確になる
この請求処理フローのいい点が、STEP2の事業部からの支払処理依頼の際に費用負担部門が自動的に明確になることです。当たり前ですが支払処理をするのは経費を使った部門になりますので、経理部はそのまま支払依頼処理をした部署を責任部署として登録しておけばよいだけとなります。
理想的な請求処理フローは、ダメな請求処理フローと比較すると、事業部の支払い依頼処理というSTEPを1つ挟むため請求処理自体の業務効率を考えると悪くなっています。実際に、事業部側では毎月支払依頼処理をしないといけないので、業務工数がかさんでしまいます。ただし、上で説明したようにたとえ業務効率が悪化したとしても、社長目線で費用負担部門が明確になったり・事業部でも費用に関してシビアになるなど、それを上回るメリットのほうがはるかに大きいのです。そのため社長さんは赤字状態からの脱却のためには、まず請求処理フローが経理部への直接請求になっている場合には、必ず使用部門へと請求させるようにすべて変更しておきましょう。
今回は、よくある赤字経営の企業のダメな請求処理フローと、ダメな理由、そして理想の請求処理フローの流れを説明しました。もしダメな請求処理フローを実施している場合は、是非理想の請求処理フローに変更ください。そうすれば黒字化への道も近づいてくるはずです。
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